A case of atypical hemolytic uremic syndrome triggered by a surgery, and treated with eculizumab
手術を契機に発症した非典型溶血性尿毒症症候群に対し,エクリズマブを投与した症例

Takahiro Masuda, Koichi Nakazawa, Chieko Mitaka
2016 Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine  
J Jpn Soc Intensive Care Med 2016;23:673-4. はじめに 非典型溶血性尿毒症症候群 (atypical hemolytic uremic syndrome, aHUS) は,近年,補体制御異常と の関連が注目されている 1) 。今回,手術を契機に発症 し,エクリズマブを投与したのち,腎機能の回復を認 めた aHUS 症例を経験したので,若干の文献的考察と ともに報告する。 症 例 症例:44 歳,女性,未経妊未経産。特記すべき既往 症や家族歴なし。 現病歴:近医で腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行され た。手術時間 3 時間 2 分,術中出血量 9 g にて終了した が,術後 1,900 ml の血性ドレーン排液を認め,同日緊 急開腹止血術を施行された。開腹所見上,血管の破綻 部位はなく,子宮創部からの oozing を認めるのみで あった。止血術後も血性排液が持続し,総排液量が 3,500 ml に達し, 近医での治療継続が困難と判断され, 精査加療目的に当院へ転送となった。 臨床経過:入院後経過を Fig. 1 に示す。当院での第 1
more » ... で,Hb 3.9 g/dl と貧血であり輸血療法 を継続したところ溢水傾向となったため,持続的腎代 替療法を導入した。血小板減少 (28,000 /μl) と出血 傾向から,当初は播種性血管内凝固 (disseminated intravascular coagulation, DIC) を考慮したが,急性腎 傷害 (Cr 3.52 mg/dl) ,検鏡にて破砕赤血球 (8%) を認 めたことのほか,発熱 (38.1℃) があり,凝固障害を認 めなかった 〔PT 91.3%,APTT 30.0 (control 29.0) sec〕 こと,LDH 高値 (1,473 U/l) を認めたことから, 外 科 手 術 に 関 連 し た 血 栓 性 血 小 板 減 少 性 紫 斑 病 (surgical thrombotic thrombocytopenic purpura, sTTP) と診断し,第 4 病日より血漿交換療法 (81 ml/ kg,3 日間) を実施した。腎機能は回復せず,間欠的透 析療法へ移行した。第 7 病日に補体の軽度低下 (C3 64 mg/dl,C4 8 mg/dl) と,a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13 (ADAMTS13) 活性が 73%であることを確認したた め,補体制御に関する遺伝子異常検査や蛋白解析検査 の結果は得られていなかったが,広義の aHUS と診断 し,本人からの同意を取得した上で,第 8 病日よりエ クリズマブ (900 mg/week) を開始した。 エクリズマブ投与開始後,尿量は回復傾向となり, 第 18 病日を最後に透析離脱となった。その後も順調 に経過し,第 29 病日に自宅退院となった。以後もエク リズマブ 900 mg/4 weeks の間隔で継続し,血液検査 上も腎機能の増悪の兆候を示さず経過した。最終的な 解析結果では,本症例では補体制御に関する遺伝子異 常は見出されなかった。 考 察 周術期の血小板減少や腎傷害などの症候は,これま 手術を契機に発症した非典型溶血性尿毒症症候群に対し,エ クリズマブを投与した症例 増田 孝広 *1 中沢 弘一 *1 三高千惠子 *2
doi:10.3918/jsicm.23.673 fatcat:siji2azz7fd6ln7jnykvn64qea