Fundamental studies on physiological function of fish ovary and its application to induced sexual maturation
魚類の卵巣の機能解析とその応用技術について

HIROHIKO KAGAWA
2010 Nippon Suisan Gakkaishi  
卵巣の形態と機能(見えることと見えないこと) 私が配属になった研究室では,主に光学顕微鏡 (光顕) や電子顕微鏡(電顕)を用いた組織形態学的な実験手法 を駆使して,魚類の生殖生理に関する研究が行なわれて いた。たとえば,イシカワシラウオの卵巣を周年通して サンプリングし,Bouin 氏液などで固定後,組織切片を 作製して光顕観察するという手法である。このような解 析によって,卵巣の外観や卵径及び生殖腺体指数などの 情報だけでは見えてこない,より詳細な生殖腺の構造や 卵母細胞の発達過程などの情報が写真として得られるこ ととなる。このような情報から,卵母細胞の成長過程が 明らかとなり,卵巣の発達に及ぼす環境因子の影響など について推論することができるのである。しかし,この ような光顕レベルでの観察は,卵巣で起こる卵母細胞の 発達過程をあるがまま,写真として記録することはでき るが,それ以上の卵巣組織の機能や卵母細胞の形成機構 などの詳細な情報は見えてこないのである。そのような 中で,酵素組織化学的手法および電顕を用いた微細構造 学的手法を用いて,ステロイドホルモン産生細胞を同定
more » ... ロイドホルモン産生細胞を同定 した長濱嘉孝先生(基礎生物学研究所)の論文 1) との出 会いがその後の研究人生を変えた。このような機能組織 学的手法を用いて,メダカ, 2) ティラピア,およびアメ マス 3) などの卵成熟排卵に伴う卵巣の発達過程を光顕 や電顕レベルで観察することによってさらに多くの詳細 なデータが得られるようになった。たとえば,魚類の卵 濾胞組織の基本的構造は基底膜をはさんで卵母細胞側か ら顆粒膜細胞層と莢膜細胞層の 2 つの細胞層から形成 されることや莢膜細胞層中にステロイドホルモン産生細 胞の微細構造上の特徴を示す細胞が存在すること,およ び成熟排卵時に顆粒膜細胞の微細構造が大きく変化す ることなどが明らかとなった。さらに,酵素組織化学的 にステロイド転換酵素,たとえば 3b  hydroxysteroid dehydrogenase (3b HSD) 等が,ステロイドホルモン 産生細胞と推測した細胞に目に見える形で観察できたと きは感動したものである。同様の手法は電顕レベルでも 可能で,3b HSD がキンギョの頭腎のコルチコイド産 生細胞の滑面小胞体やミトコンドリアのクリステ上に存 在していることが目に見えたのである。 4) ステロイドホ ルモンの代謝経路を生化学的に調べていた研究者が,こ の写真をみて感激してくれたときには,目で見えること (写真)が人に与えるインパクトの強さを認識させてく れた。しかし,機能形態学的な研究は卵子形成に係わる 細胞の機能に関するより詳細なデータを確実に提供して くれるが,一方で,機能形態学的手法によって得られる 結果は,たとえそれが生殖現象に伴う時系列的なデータ であっても,2 次元の切り取られた断面を見ているに過 ぎないので,生理機能分子の同定や動きなどの情報を得 ることはできない。そこで,それらの情報を得るために は,他の実験手法を用いる必要があった。 生体外培養法(見えないものを見えるようにする) このような欲求を満たす実験手法としてその当時から すでに魚類で用いられていた方法に生体外培養法があっ た。この方法は反応系を単純化してより直接的な証拠が 得られる利点がある。さらに,この実験系の解析にステ ロイドホルモンのラジオイムのアッセイ法(RIA 法) を用いることで,それまで得られなかった物質レベルで の多くの情報を得ることができるようになった。 5 7) 修 士で行なった機能形態学的な研究がきっかけとなり,長
doi:10.2331/suisan.76.336 fatcat:rrmhxxml4bdgfo46tcbtw3jxjm